
英語物語、それは英夫と英子とおこしんやぴよ子の物語。
でも、ねえちょっと、ちょっと待って?
もしかしたら、もしかしたらだけど、いなかったかもしれない。
英夫と英子が夢の世界に迷い込んで来ていない、そんな世界もあるのかもしれない。
まあ彼らが迷い込まないことなんてないんだけど、
もしそうなった場合は別の誰かが世界を旅するのかもしれない。
これはまんまるおもち氏の黒歴史ノートにつづられたもう一つの英語物語。
「新訳 英語物語 -キノコは世界を救う-」である。
ここは全ての民がシイタケを崇めているとウワサされる大分県の豊後大野(ぶんごおおの)。
ここでは沢山のどんこ君たちが、仲良く楽しく暮らしています。
「ぢゃないよ、ぢゃないよ」
元気な、それでいて少し気の弱そうな声が聞こえてきましたね。
そう、彼がこの物語の主人公です。
彼は他のどんこ君たちより、ちょっと口下手みたいです。
仲間のどんこ君から声をかけられても
「一緒に乾燥して遊ぼうよ、遊ぼうよ」
「ぢゃないよ、ぢゃないよ♪」
他の子から声をかけられても
「九州場所の優勝は誰かな、誰かな?」
「ぢゃないよ、ぢゃないよ?」
あまりお話は上手ではないけれど、仲良く楽しく暮らしています。
そんな彼ですが、ある日旅に出ることにします。
豊後大野の外の世界を知らない彼が、なぜ旅に出たのか?
その理由について、新しい友達や未知の原木を求めて、はたまた迷子になったやらお散歩のついでやらやら、
いくつかの説はあるのですが、ただ何となくだったという説が有力となっています。
そうして旅立った彼ですが、実はちょっとした才能がありました。
彼は英語バトルが得意だったのです。
九州地方の各地を旅して愉快なゆる達と出会っていく中で、
彼の英語バトルの能力はさらにニョキニョキと成長していきました。
そして、うっかり辿り着いた鹿児島県の桜島。
なんだか偉そうな大根に案内されて登場した朱雀に彼は英語バトルで力を見せます。
「それだけの力があるなら他の地方も見て回ることを薦めるよ、きっと楽しくなると思うからね」
「ぢゃないよ、ぢゃないよ♪」
大物感を漂わせている四聖獣に認められ、
自信をつけた彼は九州地方を飛び出し全国へと進んで行きます。
中国地方。
「にゃーご♪どうやって海を渡って来たかは気にしないことにするにゃ」
「ぢゃないよ、ぢゃないよ」
近畿地方。
「この菌類、僕のスキルとの相性は悪くないかもですぅ」
「ぢゃないよ、ぢゃないよ」
中部地方。
「ヒック……むにゃむにゃ、まあこの世界で沈没することは無いんだけどね」
「ぢゃないよ、ぢゃないよ?」
関東地方。
「そうじゃな……。じゃないよ、じゃないよ、にするのはどうじゃ?」
「ぢゃないよ、ぢゃないよ」
東北地方。
「椎茸ピザ……悪くなさそうだけどオイラはカキの方がいいな」
「ぢゃないよ、ぢゃないよ」
そして、北海道。
一部の地方を放ったらかしている気もしますけど、
九州からまっすぐ進み続けて、彼はその地へと辿り着きます。
そこは温暖な場所を好むシイタケにはとても厳しい北の大地……。
そしてそして、そこより更に先、特殊なボートで辿り着く物語の終着点……。
そこに待っているはずの……
待っているはずの…………がいない!?!?
本来そこで待ち受けているはずの絶対的な存在……
しかし、それは何故かいない……??
そこで代わりに待っていた者は……
「ネギっメンマっチャーシュー!!」
「ぢゃないよ!?ぢゃないよ!?」
そう!!そこに待っていたのはケンZO!!!
本来は福島県の喜多方のゆるであるケンZO!!
だが目の前にいるケンZOは明らかに様子が異常……!!
手に持つタケノコが邪悪なオーラを放っているのだ!!
そのタケノコこそ闇のタケノコ……ッ!!
邪悪なるタケノコにケンZOは意識を乗っ取られてしまっているのだ!!!
闇のタケノコは邪悪な力により、その美味しさを増幅する……!!
このままでは世間でのタケノコ人気が高まり、
キノコ、タケノコのパワーバランスが崩れてしまう!!!
僕らの平和な日常がとんでもないことになってしまう!!!!
この世界の命運をかけた最終決戦が……今始まる……!!!!
闇の力の支配によりケンZOは自我を失い狂暴化している!!
ケンZOのタケノコから解き放たれた闇の波動が襲い掛かってくる!!
直撃すれば、何か痛そう!!!!
しかし、長い旅を経てこの場で対峙する彼もまた実力者!!
闇の波動を紙一重でかわし、すかさず反撃の高難易度問題を回答!!
両者の間で激しい英語バトルが繰り広げられる!!!!
ケンZOとの戦いは三日三晩に渡り適度に休憩をはさみながら続いた……!!
だがしかし、闇の力……それはあまりにも……強大……!!!
その力を前にさすがの彼も徐々に追い詰められていく……!!
そんな時、旅で出会った仲間たちの言葉、彼はそれを思い出す…………
「カステラをくれてやんよ」
「おでん食えよっ!」
「お鍋を食べたら、次は福井に行くといいよ」
みんなの想いが力に代わるッッ!!!
渾身のエクセレント回答が炸裂!!!!!
「ぢゃないよ、ぢゃないよーーーー!!!!」
「ネ゙ギっメ゙ン゙マ゙っヂャ゙ア゙ア゙ジュ゙ヴヴヴ!!!!」
ついに!!ついについについに!!!ケンZOを打ち破ったのである!!!!!!
「バ、バカな、なぜだ……俺は闇の力でタケノコの旨味を極限まで引き出した……
このタケノコの前では他の食材、他の料理なんて無価値だというのに……
なのに負けただと、この俺が、この俺のタケノコが負けただと……」
信じられないといった表情をするケンZOに、彼はそっとこう言いました。
「……ホントの美味しさって心なんだよ、なんだよ」
その言葉を聞いたケンZOから…………闇の力は…………少しずつ…………消えていきました。
「はっ、僕は一体何を??」
「ぢゃないよ、ぢゃないよ♪」
闇のタケノコから解放されて元に戻ったケンZOは、
ゴメンナサイして2秒で仲良しになったそうです。
こうしてキノコ、タケノコのパワーバランスは元の均衡をとりもどし、
世界に平和は訪れました。
世界を救ったあと九州地方に戻ってみると、豊後大野はお祭り騒ぎの大騒ぎです。
ヒーローの帰還に仲間のどんこ君たちは大喝采。
その中の一人が彼にこうたずねました。
「大変だったね、だったね。旅に出たのを後悔したりもしたんぢゃない、ぢゃない?」
長かった旅を思い返し、彼は笑顔でいつものようにこう言いました。
「ぢゃないよ、ぢゃないよ」